横溝 静"Kurogo"
ワコウ・ワークス・オブ・アートでは、2015年8月1日より、横溝静の新作展「Kurogo」を開催致します。 7年ぶりの新作展となる今回は、2008年から娼婦をモデルに制作してきたシリーズ《all》のアウトテイクから生まれ、去年ロンドンのDaiwa Foundationでの個展で初公開された連作《Register》(2014)、《all》と同じく娼婦を撮影した続編《V》(2009)と合わせて、黒装束の人物と黒いキューブを漆黒の空間に配置した最新作《Untitled(Kurogo)》(2015)を展示します。 横溝静はこれまで、室内で眠る友人を暗闇のなかで撮影した《Sleeping》(1995-97)、見知らぬ人々に手紙を送り、同意を得られた相手を窓の外から撮影した《Stranger》(1998-2000)、心霊体験をもつ役者を集め、過去演じた人物を再演させながら自分の心霊体験を語らせ撮影した《Phantom》(2006)など、写真、映像に関わらず、一貫して人間をテーマの主軸に据えて作品制作をおこなってきました。一見、シンプルなポートレイト作品に見える横溝の作品の真の被写体は、人間が抱くイメージの正体、虚構と現実の間に横たわる溝、被写体と作家自身との関係性そのもの、写真という媒体が成立する構成条件そのものなど、常に不可視の要素であり、人物はたんにそれら真の被写体を指し示す道標の役割を果たしているに過ぎません。 最新作の《Untitled(Kurogo)》(2015) では、裸体の娼婦をモデルに2008年から制作してきた《all》から一転して、全身を黒い衣装で覆われた人物が、真っ黒な部屋の中に、カメラの存在にはまるで無頓着な様子でたたずんでいます。見えないという約束事のもとに舞台上に登場する黒衣という存在を敢えて被写体としたこの最新作は、イメージというものの自律性を問うものであり、表層のイメージを裏から成立せしめる存在、表層的なイメージとそのイメージの向こう側にある世界をつなぐ存在、画像を構成するピクセルを思わせる黒いキューブを伴って、その構造は重層的な読み取りを可能にする要素に満ちています。 長年ポートレイト作品を制作してきた横溝は、近年、文化人類学的なテーマにも関心を向け、新たな展開を予感させる作品を制作しています。現在同時開催中の国立新美術館の「アーティストファイル2015」展(7/29-10/12)では、そういった新たな探求によって生まれた写真作品、立体作品を展示しています。当画廊の個展と合わせてご高覧いただければ幸いです。 同時開催: 夏期休廊:
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